第四回 きもの業界と介護業界の類似性?
先日、あるきっかけで介護施設に行く機会があったが、そこはとてもきれいで、利用者の老人や施設で働く方々も明るく、好感が持てたが、働く人々の言葉遣いを聞いているうちに、だんだん腹立たしくなってきたと同時にあれ、私がきもの業界で感じ続けている言葉遣い似ているぞ!と感じてきた。
利用者といえば、お客様であり、ほとんどの場合、人生の先輩なのに、よくて友達、悪くて子供相手の話し方をしている。言いきかせるような、上から目線な言葉の数々に閉口しながら、きもの業界、特に販売を伴うシーンでの顧客に発する言葉遣いとダブってきた。
もちろん、よそよそしい丁寧すぎる言葉は、人と人との距離を遠ざけるが、相手を考えない友達言葉は、発する人の品格を貶め、業界全体のイメージをも傷つける。(2024/6/6筆:佐藤正樹)
第三回 一週間だけのきもの?
写真は山口県萩市が10月1日から約1週間行う「着物ウィークin萩」のポスター。期間中は様々な企画があり、たくさんのきもの姿が街を彩ることを期待したいものだ。特に同市は昨年、きものの似合う街大賞で全国グランプリに選出されており、わたしも何度も訪問したことがあるが、市内には多くのきもの姿が映える場所が多く、まさにきものの似合う街だと思う。ウィークの成功を祈りたい。
ただ、「着物歩きが、おトクな一週間」というキャッチコピーがどうしてもひっかかる。世の中、お得への価値観が充満しているからこそのキャッチなのかもしれないが、きものを着てもらうために、お得が必要なんて、情けないと直感してしまう。
きものは四季の表現が豊かで、刻々と変化する自然と一体になったものであり、その街の四季をより感じるためものであろう。なぜ春夏秋冬の中のわずか一週間だけなのか?
品格、敬意、礼儀、本質、見識、洒落、誠実
世の中が失いつつある日本らしい、これらの言葉のすべてがあてはまる、日本文化の集大成のひとつが和装であり、それをおトクと表現するのは、実に「今」を表している。
もちろん、きものを着るキッカケになればという狙いはわかるが、これではきものがコスチュームになってしまう。こんな企画がきもの姿をどんどん特別なものにし、普段から遠ざけている。こんなことを言うのも着物警察なのかな?(2020/9/22筆:佐藤正樹)
第二回「二十歳の振袖」の行方は?
来年の成人式が心配です。このまま感染症が終息して、例年のように開催できるでしょうか?成人年齢が18歳になり、二十歳(はたち)の持つ社会的意味が小さくなることで、そもそも成人式がどうなるのか?という基本的な心配をかかえながら、さらにこの感染症の広がり。二十歳の振袖が大ピンチです。振袖需要に大きく依存するきもの業界も、きもの離れという慢性的な要因、成人年齢の法的な変更と感染症という2つの急性要因から、大きすぎるダメージを受けています。心配です。
この際、思い切って二十歳の振袖文化を捨ててしまってはどうでしょうか?振袖依存の高い会社も劇的に舵を切ってほしい。いや、舵を切らないと生き残れない。
18歳成人、日本全体の質素化、若者の倹約志向、親世代の価値観の変化、そして今回のコロナ禍でおそらく物凄い加速度で、振袖の市場規模は減退していく可能性が高いと思います。
それと、二十歳の振袖は日本のきもの文化全体にけっしていい影響を与えていないのではないでしょうか?多くの日本女性は「きものは成人式で振袖着ておしまい」。いきなりもの凄いごちそうを食べて、わずが一回できものを着ることに満腹してしまう。振袖をきっかけに和装に興味を持つ人はたいへん少ないように思います。
ぜひ学校で和装文化を教えてほしい。そして着付けも。そしてまず若い世代の10人に一人は「きもの好き」女子になってもらいましょう。きっとその人がキーウーマンになるはずです。「学校できものを!」よくよく考えたら当たり前!
コロナ禍というピンチをチャンスに変える方法のひとつだと思います。(2020/7/1筆:佐藤正樹)
第一回 きものへのあこがれはうつくしく経験はかなりくらい
直接聞く、着付け教室(※)の受講生の声は、和装業界の未来につながる声だと思う。その声に希望を感じることもあるが、これまでわたしも含め業界がやってきたことを肯定できない声があまりにも多い。
着付けを習おう、もう一度チャレンジしようという方々からの声だから、まだやさしさや期待がある。もの言わぬ多数の人の呉服業界へのイメージはどうなんだろうか?
過去、着付け教室に通ったが、きちんと教わっていない人がとても多い。今の教室での学び方をみれば、それは本人の責任ではなく、教室に問題があったと思わざるを得ない。呉服業界では「無理な営業姿勢」を一番の問題とされることが多く、事実、それを語る受講生もいるが、着付けそのものをちゃんと教えてくれなかったという声が多いこと、そしてその教室のほとんどが、わたしが過去働いたあの無料の教室であることに衝撃を受けた。
無料教室の仕組みは、運転は無料で教えるから、自動車を買う時はうちで買ってくださいというもので、着られない人がきものなど買うわけないので、ビジネスモデルとして秀逸だと思うが、もっとしっかり運転を教えたらどうだろうか?運転が下手のままだと、いい車に乗ろう!という意欲もなくなる。たとえ教室で購入がなくても、着付けさえ上手にできるようになってもらえば必ず需要につながると思う。
この教室に限らず、この業界の多くが、今日の食い扶持を得るために、種籾を食らうが如きである。
いまや実家のタンスにはきものはなく、おかあさんはもちろん、おばちゃんもきものを着ない、着られない。そんな次の世代にきものを着てもらうことは容易ではない。
世の中はいっきょにオンライン化にすすむ。たまに出かける、おでかけだからきものでおしゃれ。そんな意識を作らないとおそらく10年後は普通呉服の市場規模は半減していることだろう。(2020/5/27 筆:佐藤正樹)
(※)きもの新聞の発行元が主催する「やさしいきもの着付け教室」